『障害者支援に関する疑問・課題』を掲載しましたので、皆様のご意見等お待ちしています。

課題整理

日頃障害者相談支援員をしながら疑問に思っていることを列挙する。

  1. 介護保険制度における合理的配慮とは何か
  2. パーソナルアシスタント制度とダイレクト・ペイメント
  3. 介護保険制度と障害者制度の整合性
  4. 障害者総合支援法における自立生活

これらの事について疑問も含めて提起をしたい。ホームページに掲載し意見、提案をまっています。

  1.介護保険制度における合理的配慮とは何か

国連の障害者権利条約を批准し国内の法整備を進めてきた。障害者基本法、総合支援法の改正、差別解消法制定、各関係省庁の対応マニュアルを定めてきた。介護保険制度では障害者差別解消法、合理的配慮をどのように定めているかさだかでない。(私が知らないので教えてください。)

私は介護保険制度には障害者の自立生活の概念はないと思っています。「高齢者」という概念しか存在しないとともに、社会的な存在としての個人がいない。社会性が奪われる。介護保険制度の成立過程から障害者の自立生活は対象にはずされていた。これが日本の介護保険制度の不幸と言わざるを得ない。スエーデンの権利法としての社会法との大きな違いだ。

 障害者の権利は介護保険制度のもとに補助的なものとして扱われている。認知障害の高齢者に対する支援は障害者サービスを利用すれば多くの課題が解決するのではないか。24時間介助の重度訪問介護を利用したらどうだろうか、行動援護支援を利用したらどうだろうか。家族介護で仕事を辞めざるを得ない人達が障害者サービスを利用することで仕事を続けることをでき生活を維持できる。介護保険制度を保険制度としてサービス利用の制限を重ねてきた。保険料をはらってサービスなし、利用者を切り捨てている。民間保険だとサービスを利用しないと還付がある。また処遇改善加算を事業所が利用すれば負担は利用者にいく。ますます利用者が使い難くなっている。

 なぜこのようになるのか。介護保険制度にどこに障害者にたいする合理的配慮があるのか。もし障害者が介護保険を利用した時にサービス量がたりない場合は障害者サービスで補う事になっていることなのか。負担も含め身体が30分、生活援助が45分と刻まれ、生活を制約される現実がある。調理する時間がとれないばあい配食弁当に切り替えられる。どこにその人らしい生活があるのだろうか。介護保険制度を本当に人間が生きて行く制度に変えるべきではないかとおもう。

  2.パーソナルアシスタント制度とダイレクト・ペイメント

障害者自立支援法の成立過程はきわめてドラマティクであった。介護保険との統合を含め1割負担の導入を小泉内閣が導入しようとして障害者団体の反対にあい頓挫したが、翌年の郵政選挙での小泉政権の誕生、障害者団体の一部が賛成し障害者自立支援法が成立した。サービス料の1割負担の導入により多くの障害者はサービスを控えた、負担をはらえないため悲観して心中をする障害者家族もでた。裁判に障害者も立ちあがった。自民党政権から民主党政権になり内閣に障害者制度審議会が設置され3分2が障害者当時者や障害者団体の代表が占め、各課題ごとにワーキンググループが作られ検証が行われ、障害者自立支援法を廃案し「障害者総合福祉法」に改正することになり、裁判闘争を行っていた障害者団体と和解した。民主党政権が崩壊し今日まで自立支援法は総合支援法と名称を変え一部改正し存続している。

 総合支援法の根幹をなすサービス内容は介護保険制度と重複する部分が多い。障害者団体が提案したパーソナルアシスタント制度とダイレクト・ペイメントは導入されていません。サービス主体が事業所になっているため一見サービス利用にあたっては負担が双方に少ないように見える。介助者は事業所より派遣され、事業所が利用料を受け取る(代理受領)。この制度が障害者の自立生活につながっていくのだろうか。はなはだ疑問に思える。障害者にとって介助者を自分で育てる必要が無いため事業所に介助者の請求をすればよい。事業者は本人の意向よりも事業所の意向を優先する。介護保険制度を利用している障害者にこんな笑い話があった。天ぷらを作って時間だからとお皿ごと冷蔵庫のうえに置かれた。車いすでとれない猫に小判のきもちだった。コーヒーやたばこは趣味だから出来ませんといわれた。配食弁当の味噌汁をつくってと言ったら、そういうことはプランに乗っていませんと言われた。ゆで卵を半熟にしてほしいと頼んだら、半熟に出来ないと断られた。脳性麻痺で嚥下障がいがあるので堅いゆで卵はむせてしまう。調理に時間がかかるのなら弁当にしたらとも言われた。

 パーソナルアシスタント制度とダイレクト・ペイメントは自立生活の両輪です。サービスを利用する障害者がサービス料を国から受け取り雇用している介助者に支給する制度です。障害者が介助者の雇用主になり給与、保険、年金、労働保険等の手続きをおこない当然労働基準法に基づいた雇用関係を築きます。

雇用主である障害者は自分の介助者として(パーソナルアシスタント)して介助法等を含めて教育をします。障害者が介助者に対して責任を持つ制度です。

 この制度のメリットは双方に責任が存在するからです。介助者が時間を守らない、不適切な介助をする等の場合は障害者が解雇する権利が存在します。また介助者は障害者の勤務時間を超えた介助の要求や危険を伴う介助の要求、ハラスメント等に対して労働者の権利が主張し改善を求める事ができます。この制度と併用し事業所の代理受領方式の利用もあります。

 現在の障害者総合支援法は両者にとって問題が存在する制度では無いでしょうか。

  3.介護保険制度と障害者制度の整合性

私も65歳過になる障害者の介護保険の移行準備を行っていますがいつも自分のなかで自己矛盾を感じています。いままで障害者運動に関わった人達からの声が聞こえてこない。みんなどうしているのだろうか。介護保険を利用する事での障害者のメリットは何だろ。福祉用具の豊富さだろうか、リースでの利用しやすさと毎月の点検、交換が容易であることか、デイケアでのリハビリと入浴、食事がセットになっていることか、サービス事業者の豊富さか、1割負担を納めれば事業者を選択できる。できあがりのパックを利用すれば面倒がないのか。全てケアマネにまかせれば自分はほとんど心配しなくていいのか。

介護保険は3年ごとの報酬改定と5年ごとの制度改正がおこなわれる。2021年度が制度改正の年度になる。介護度2以下のサービスは地域の総合事業に移される。また生活援助も介護保険から外される等が議論されている。介護保険に入らずに障害者が自分の生活を全う出来るのがいよいよ重度訪問介護サービスしかなくなったがこの制度もあくまで居宅サービスの範囲だ。リハビリや訪問看護を利用するときは介護保険の利用になる。では障害者が障害者としてどのように生活をしていけばよいのか。

もう一度介護、介助とはなにかを考える必要があるのではないか。最初の一歩が介護の分断の解消にあるようにおもっている。身体、家事、移動、同行援護、行動 援護等と分断されたものになり、報酬もちがう。身体介助が家事援助の2倍近い報酬になり生活の基礎となる家事援助が軽んじられている。生活の基礎が築かれないと病気や生活習慣病を促進し障がいの重度化につながる。

介護保険が導入されるにあってヘルパー派遣制度が人件費補助方式から事業費方式に変更され実績に応じて報酬が支払われる事になった。介護は身体、家事に分断され移動支援は選択的な自治体の事業になった。

もう一度介護保険を地方から見直す必要があるのではないか。総合事業に介護保険の軽度部分が移行するなら介護の一体化を要求してはどうだろうか。また制度的には介護保険制度に障害者権利条約の批准の条件である障害者の権利を定め、障害者を位置づけるべきではないか。障害者差別解消法との関係も明確にすべきではない。絶えず制度的な整合性はとわれている。

  4.障害者総合支援法における自立生活

参議院議員に2名の障害者がなった。重度訪問介護を利用して生活をしている。議場のバリアフリー化、議員活動での重度訪問介護の利用を要求している。まず総合支援法の大きな目標は障害者の就労支援だ。名古屋の障害者達が裁判をおこした。就労支援の利用に自己負担を取るのは違法ではないかと負担の支払いを拒否し裁判をおこした。全く当然のことだ。就労支援を行いながらハローワークの就労事業には手当がでて、負担はないが、総合支援法には負担が取られるのか。逆に就労手当があっていいのではないか。また就労をする障害者に移動支援ができない。移動支援は通勤、通学の利用を禁じている。矛盾ではないか。就労や就学を進めるには当然移動支援を認めるべきではないか。私の事業所に相談があったが行政とかけあった実現していない。障害者が地域で活動する(議員活動もふくめ)報酬が伴うばあい福祉サービスは利用出来ない制約を撤廃すべきではないか。

総合支援法は契約制度で事業所と利用者との契約でサービスが行われ、自治体は支給決定と監督する立場で直接介在はしない。

  

 3の項で述べたが事業所代理受領方式の矛盾が存在する。障害者支援をおこなう介助者を養成する機関が存在しない。現在訪問介護初任者研修、介護福祉士養成も殆どが介護保険を軸とした訪問介護員養成となっている。障害者の車いす操作もできない介護者が増えている。自立生活センター協議会関係の事業所で長時間介護に必要な重度訪問介護者の養成を行っているが、あくまで重度訪問介護のサービスに限られる。介助資格が義務化し厳格化し以前あった障害者が認めた無資格のヘルパーは存在しない。重度訪問介護利用者は自分で介助者を捜し、あるいは全国自薦ヘルパー協会の協力を得ている。地元の障害者団体が重度訪問介護事業所単独での事業を行っているところは殆どない。ヘルパーは介護保険、障害者サービスを含めて様々な事業を組み合わせて事業展開をおこなっている。私の地域では視覚障害者を支援する同行援護事業者は私どもを含めて2事業者で、同行援護研修を行い介護保険事業者に事業者指定を促したが実現しなかった。移動支援も同様で福祉運送輸送をセットで行っているのも2業者のみ。障害者の自立生活は介助者育成がかかせない。地域のなかで重度訪問介護を利用し自立生活をしている障害者は絶えず介助者を募集している。介助者育成機関が共同で障害者介助者育成機関を運営できないものだろうか。

 最後に問題は果てしなく広い。制度の変遷は早い。活動していた障害者も高齢化し、制度が整備されることでサービス事業所と家との往復の障害者が多くなり、就労事業所を多くの障害者が利用している。健康被害と自己破産が増えている。高い工賃を目指し事業所は働く障害者を求めている。工賃を貰うことを目的とし生活を顧みない。気がついたら大きな負債をおっていた、体重の増加で健康を害していた。障害者の自立生活に事業所は支援をしない。何でこんな事になったのだろう。(文責武田幸作)

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