許せない障がい者に不妊手術

 12月19日朝4時頃起きて、何気なくいつものように新聞を広げた。心が凍る記事が目に飛び込んできた。「障がい者結婚不妊条件に」。私はボーとした頭を叩き、記事を読んだ。涙があふれそうになり、何でという気持ちがこみあげてきた。

40年前私は妻が妊娠した事を知り、産婦人科の受診を断られて、国立病院に行くために坂道を車いすを押して登って行った。周囲の好奇な目の中で受診室に入ると、すぐに看護師が来て「優生保護法13条への署名」求めた。拒否すると医師は「誰が面倒をみるんだ誰が育てるだ」居丈だけに言い放った。でも我慢するしかなく、その医師のもとに通い続けた。触診して生きていることを確認するだけで、きちんと診察をしなかった。どうするか不安な日が続いたが、担当医が若い医師に変わると診察内容も急転し、音波診断で胎児の写真を撮り「元気です」と言い、出産の準備を、脳神経科、麻酔科、産婦人科、小児科と病院内でチームを組み、帝王切開での出産の準備をした。

介護ノートに、同行した若い介護人の感動的な記録が残っている。入院中は病院に大学の後期試験中だが介護人が交代で泊まってくれた。退院後は介護人の協力と市の保健師が訪ねて来て、母子の健康、赤子の入浴の仕方などを教わり「上田のばあちゃんだよ」と何くれとなく支援してくれた。

 障がい者の恋愛、結婚、子育ては人として当たり前の事だ。障がいを持つことでこの全てが奪われてきたことは、「優生保護法」のもとで多くの障がい者が被害者となり、ハンセン病患者の人達も犠牲になった。「あすなろ福祉会」の人達は知らないはずはない。「強制ではない」と「同意」を得ていると言っているが、明らかに虐待だ。障がい者の生きる権利を奪っていることを隠す詭弁だ。施設の地域での強権的な支配と管理が変わっていない。 

障がい者は理不尽な制度と戦ってきている。恋愛の自由、結婚の自由、地域で生きる自由をかけて戦い続けている。私たちの地域でも多くの障がい者が結婚し子育てもしている。確かに制度は不十分だが様々な形の支援を作りながら、制度を変え、行政に要求を行い、より良い地域作りに取り組んでいる。過去と思っていた不妊手術の実態を早急に全国規模で調査し、差別撤廃に向けて障がい当事者と共に解消に取り組むことを期待したい。

武田 幸作

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